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突然死と時間医学

日内リズム(概日リズム) circardian rhythm サーカディアンリズム

映画"ブッシュマン"をご覧になられたことがありますか?アフリカ原住民の、主人公ニカウさんの日常生活を題材にしたものです。日が昇るから目を覚ます。目が覚めるから動き出す。動き出すので腹が減る・・・・・・日が暮れるから眠くなる。だからブッシュマンは平和なのです。というエピソードがあったと思います。やはり人間は、太陽の光を受けて活動し、暗くなると休息をすることが、自然なことで、自然治癒力を高めるためにも太古の原始時代より営まれてきた、わたしたちの日内リズム(概日リズム)を理解して、医療にアプローチする必要があります。皆さんも時間医学を考えるときに、現代社会が抱えるさまざまな問題と取り組むときに、ふと疲れたときタバコでイップクするのではなく、アフリカの大地とニカウさんの顔を頭の中に描いて下さい・・・・・ちなみに大ヒットした映画"ブッシュマン"主人公ニカウさんが、出演料として受け取ったのは、牛だったそうです。

日内リズムとメラトニン

朝日が昇り太陽の光が、目に入ると網膜から刺激が、松果体へ送られ、メラトニンの分泌をコントロールします。このメラトニンの分泌は、夜8時頃から除々に増えて、午前2時頃が最も高く、早朝には、ほとんどゼロになります。この変化が、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスに関与しています。現在は、このメラトニンの分泌リズムの失調により、睡眠障害やうつ病の原因となることが解かっています。

睡眠には目がキョロキョロ動くレム睡眠(REM:rapid eye movement)と、眼球が動かないノンレム睡眠(NREM:non rapid eye movement)があり、レム睡眠とノンレム睡眠が、1セットになり90分毎に繰り返して、一晩の間に3~5回のレム睡眠があります。レム睡眠の間に、わたしたちは夢を見ていると言われています。

自律神経系には、血圧や脈拍を増加させる交感神経系と、血圧や脈拍を減少させる副交感神経系(迷走神経)があります。睡眠中は副交感神経系が優位となり、血管や気管が細くなり、血流も低下します。早朝になると一日の活動に備えて、交感神経の活動が始まり、血圧も脈拍も増加します。早朝の一過性血圧上昇をモーニングサージと呼んでいます。また血糖値も上昇します。早朝は血小板凝固能も亢進し、血液が固まりやすくなっているため早朝は、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすくなります。このようなわたしたちの日内リズム(概日リズム)と、生理学的なメカニズムにより、さまざまな病気の発生と、時間との関係から、時間帯によって起こりやすい病気もあり、同じ治療でも行う時間帯により、効果が異なります。

このような観点に立った医学を時間医学と言います。突然死を起こす心血管疾患、脳血管疾患を予防するためには、時間医学の考え方が必要です。単に早朝の高血圧に対して、内服の服用時間を決定するばかりでなく、突然死を招く疾患つまり、動脈硬化の発生を予防するために、脈拍、血圧などの個人個人の独自のデータをもとに、予防薬を選択し、生活習慣を見直していく必要があると考えています。

心筋梗塞・脳梗塞

朝8時から10時までに最大のピーク、次のピークは夕方。起床3時間以内に発生することが多い。

早朝は、覚醒の準備として交感神経が、活動しはじめカテコールアミンの分泌が高まり、血圧、脈拍ともに増加します。またレニン(腎臓の血流が低下すると、血流を増やそうとして血圧を上げる物質)も朝になると増加します。さらに血小板の凝集能も亢進するため心筋梗塞が起こります。

命の水・・・寝る前と起きたらすぐにコップ1杯の水を!

夜間には発汗による脱水を生じやすく、早朝の血小板凝集能の亢進により、寝ている最中の血液は、ドロドロ血になるため突然死に要注意です。夜寝る前に1杯の水を飲みましょう。コーヒーやお茶には、カフェインが含まれており、せっかく飲んでも血液の中にとどまらず、すぐに尿になって出てしまいます。コップ1杯の水がお勧めです。朝起きたらすぐにコップ1杯の水を飲みましょう。

早朝は、副交感神経系優位から交感神経系優位に、切り替わる時間帯です。このため血圧、脈拍などの自律神経系は非常に不安定になります。室温の変化は要注意です。トイレの温度にも気をつけることが大切です。

入浴は血圧を変動させます。朝風呂はご用心。・・・浴槽内の死亡は高頻度です。

狭心症

異型狭心症という安静時でも冠動脈が攣縮することで起こる狭心症は、夜中の2時から4時までがピーク。

労作性狭心症という運動時に冠動脈の血流不足によって起こる狭心症は、心筋梗塞と同じ時間帯に発生します。

気管支喘息

朝4時、5時頃の覚醒前がピーク。

この時間帯には、気管支が最も細くなります。また、気管支粘膜の過敏性を刺激する朝の冷気や、免疫の関与も発生原因と考えられます。

胃潰瘍

胃酸の分泌は夜間がピーク。

胃の粘膜が胃酸により刺激されると発生、寝ていること自体が、胃酸が食道へ逆流しやすいため、逆流性食道炎も発生しやすくまります。このため抗潰瘍薬は、夜に服用すると効果的です。

ガン(悪性新生物)

ガン(悪性新生物)とは、細胞が悪性化し増殖する病気です。正常細胞にも悪性細胞にも、日内リズム(概日リズム)があるため、また免疫にも日内リズムがあるため、ガン治療にも効き目のある時間帯があります。

脳出血

脳出血は夜間に多く発症します。夜から早朝にかけては、自律神経系の変動が激しいためです。

高コレステロール血症

コレステロールは夜、寝ている間に作られます。このため抗コレステロール薬は、夜飲むと効果的です。

糖尿病

インスリンの分泌量も日内リズム(概日リズム)があります。インスリンの分泌は、早朝少ないため血糖値は、午前中上昇します。

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